御曹司を探してみたら

「黙ってたこと……怒ってんのか?」

「ううん。それはいいの……」

機嫌を窺うように尋ねる武久に私は首を横に振った。

嘘をついていたことを今更追及する気はない。

もし本当のことを知っていたら、私の性格からして首を突っ込みかねない。

万が一でも情報がもれたら、コンクールに出品する前に周防社長に全力で阻止されていたことだろう。

「ねえ、周防社長はなんて言ってたの?」

「……もう勝手にしろってさ。親父もようやく俺の意思は固いって悟ったみたいだぜ」

御曹司だからと大目に見るには、話が大きくなりすぎた。

カルテッドの名前を使ったことが会社中に知られてしまったからには、武久を許しては他の社員に示しがつかない。

「武久はこれからどうするの?」

「友海が雇ってくれるってさ。それこそ死にもの狂いで働くことになりそうだ」

「そっか……」

ようやく大手を振ってカルテッドで働けるとあって、武久からは後悔など微塵も感じられず、むしろ長年の因縁から解放されたような清々しさがあった。

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