御曹司を探してみたら

「お前は……どうするつもりだ?」

「どうするって……?」

「俺と一緒にカルテッドで働くか?」

「え……?」

私がカルテッドで?

誘われるまでそんなこと一度も考えてもみなかった。

武久とカルテッドで働くなんてまるで夢みたいだ。

カルテッドの仲間と生き生きと働く武久と一緒に仕事が出来たら楽しいんだろうなと容易に想像できる。

その一方で避けようのない現実が眼前に迫ってきていた。

任された仕事はどうするの?

採用が決まってやっとスタートラインに立てたというのに、放り出してしまっていいの?

こぶしを握り締めたまま返事に窮していると、武久がふっと寂しそうに笑った。

「そうだよな……。来るわけないよな……」

「違うの!!そうじゃなくって!!」

「いや、いい。本当は分かってたんだ」

武久は必死で弁解しようとする私を遮って諦めたようにこう言った。

「お前が好きなのは俺じゃなくて、周防の御曹司なんだろう?」

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