御曹司を探してみたら
そんな私の懺悔をすべて聞き終えた春子さんは、聖職者のごとく慈愛の心をもって優しく慰めるのであった。
「男性っていうものはとても難しい生き物ね。自分の心にもないことを時には口にしてしまうものよ」
それっていったいどういう意味?
春子さんにそう目で訴えると、わずかな躊躇いの後に武久の隠された過去がつまびらかにされた。
「永輝にはトラウマがあるの」
「トラウマ?」
「大学生の頃、永輝には彼女がいたんだけどね。その子、永輝にお金を借りたまま行方をくらませたのよ。うちが裕福だから返さなくてもいいと思ったんでしょうね」
春子さんから語られた武久のトラウマは想像以上に酷いものだった。
武久はどれほど傷ついたのだろう。
自分の存在価値がどこにあるか分からなくなってしまうくらい傷ついてもなお、決して逃げられない周防という看板を背負うしかなかった武久を思うと胸が痛んだ。
「私にはあなたを試すようなことを言った永輝の気持ちが痛いほど分かるわ。永輝はあなたには……あなたにだけは裏切られたくなかったのよ。だから自分から突き放すようなことを言ったんだわ。バカよね……」
本当にバカだ……。
武久の良いところなんて、私なら百は数えられるのに。
勝手に幻滅して、勝手に突き放して、どこぞのバカ女と一緒くたにするなんて、絶対に許さないんだから。