御曹司を探してみたら
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周防建設を辞めた私がまずしたことといえば、何をおいても就職活動である。
職にありつくためには、履歴書片手に面接会場の扉を叩くしかない。
「弊社を希望した理由をお伺いしてもよろしいですか?」
「はい。御社の斬新なデザインに非常に感銘を受けました。私も是非一員に加えて頂けたらと思い、志望致しました」
昨日、即席で考えた割には志望動機がスラスラと口から出てきて自分でも驚いている。
“とりあえず笑顔で乗り切る“をモットーに、笑顔を顔に張り付け、どんな質問でもこいと大様に構えていると、面接官の方が先に匙を投げた。
「はあ……。やめやめ。とんだ茶番だね」
そう言うと面接官は私の履歴書を天高く放り投げたのである。
ああっ!!昨日何回も書き直したのに!!
私は小刻みにジャンプして、空中を舞う履歴書を見事キャッチした。
「あのね、杏ちゃん。“またおいで”とは言ったけど、こういう意味じゃなかったんだよ?」
面接官、もとい緒方さんは長机に頬杖つきボールペンの縦にトントンと叩きつけながら、深いため息をついた。
「緒方さんってば、ふふ!!分かってるくせに~!!」
一生懸命働きますんで雇ってくださいと、両手を合わせすりすりと滑らせる。