御曹司を探してみたら
「おーもーい!!」
大型のスーツケースを転がしながら最寄りの駅からかれこれ20分も歩いているのに、目的の武久の住まいにはまだ着かない。
ところどころ遭遇する坂道ではスーツケースを押すのも一苦労。
なぜならばスーツケースは夜逃げでもしたのかと疑われるくらい荷物でパンパンだったからだ。
ようやく目的のアパートに到着したころには、全身汗だくになっていた。
私は何の躊躇いもなく、メモにあった部屋番号のインターホンを押した。
しかし、いつまで経っても住人が出てくる気配はない。
まだ寝てるの?
もうお昼過ぎなんですけど!?
こっちはここまで来るのに散々苦労したのにすやすや寝ているのかと思うと、だんだん腹が立ってきてインターホンを連打する。
「うっせー、友海!!何度も鳴らさなくても聞こえてるっつーの!!」
案の定、犯人を友海さんと決めつけた寝ぐせ頭の武久が怒鳴りながらすぐさま出てきた。
そして、私の顔を見るなり動きが止まり目を大きく見開いた。