御曹司を探してみたら

「……早宮!?」

「やっほー!!元気にしてた?」

久方振りの再会は実にあっさりしたものになった。

「随分狭い部屋に住んでるじゃない。ちゃんと生活できてんの?」

私はすぐさま靴を脱いで部屋に上がると、よいしょっとスーツケースを持ち上げ6畳の一室に持ち込んだ。

「ちょ、待て!!おい!!何でここが分かった?」

「緒方さんがあっさり教えてくれたよ?」

「あの野郎……。早宮にだけは教えんなって言ったのに。今度あったらマジで締めてやるからな……」

ぶつくさ恨み言を吐いている武久を尻目に、テキパキとスーツケースの荷解きを始めれば慌てて止められる。

「ちょっと待て。いきなり何してる!!荷物をしまえ!!」

「えー?まだなんかあるの?夜までに片付けないと寝るスペースなくなっちゃうよ?」

スーツケースからパジャマを取り出しながら口を尖らせ不満を訴えると、武久は本格的に頭を抱えだした。

「お前……何考えてんだよ」

「だから……。私もここに住もうかと思って」

「はああ!?」。

ご近所中に響くんじゃないかってくらい大きな声で叫ばれたので、両耳を手で塞ぐ。

そんなに驚かなくても良くない?

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