御曹司を探してみたら
「ふざけてんじゃねーぞ、早宮!!」
スーツケースをバンッと叩き言葉の節々に怒りを滲ませる武久に、負けじと言い返す。
「ふざけてない!!」
私がどれほど悩み、苦しみ、迷った挙句に、この結論に至ったのかを武久はまだ知らない。
「……私も周防建設を辞めたの」
だって、こうでもしないと伝わらないでしょう?
田辺さんが言ったように、私は直情的で無計画だ。その上、夢見がちの無鉄砲ときたら救いようがない。
……だから、私にしかできない方法で想いを伝えることにした。
何も持っていない私には、自分の身体と行動すべてを賭けるくらいしかできない。
私は呆けている武久の胸にまっすぐ飛び込んだ。
ぎゅっと抱きつくと、これまで我慢していた寂しさが溢れ出して止まらなくなった。
「武久のバカ!!この大バカ野郎!!人でなしの!!意気地なし!!責任取ってくれるって言ったくせに、黙ってどっか行っちゃうなんてひどいじゃない!!」
私はやつ当たり気味に武久の胸を何度何度も叩いたのだった。
「悪かったよ……」
武久が慰めるように背中をポンポンと叩いたせいで、ジワリと涙が浮かぶ。
あーもう!!泣くつもりじゃなかったのに!!
自分が悪くなくても謝っちゃうのが、また武久らしいとも言える。