御曹司を探してみたら

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「うわあ素敵!!」

ホテルの上層階にあるそのバーは、デートにはおあつらえ向きの落ち着いた雰囲気のお店だった。

ジャズがしっとりと流れ、ゆったり寛げそうなアンティークの椅子にはふかふかのクッション。なにより、バーテンダーが作る色とりどりのお酒は、乙女心をくすぐる。

まさに、互いを知るために語らい合うにはもってこいだった。

「気に入ってもらえて良かったよ」

「はい、とっても!!」

私達は早速、夜景が良く見える窓際のカウンターの席に肩を並べた。フードとお酒は田辺さんが注文してくれた。

バーテンダーは流れるような動作でシャイカーを振り、グラスに液体を注いでいく。

「どうぞ」

カウンター越しに差し出された一杯は爽やかなレモン色をしていた。添えられたミントの葉がいかにも涼し気である。

「このカクテル、僕のオススメなんだ。飲んでみて」

「ありがとうございます」

オススメだというカクテルを一口飲むと、爽やかな酸味が鼻を抜けていった。

「うわあっ美味しいです」

果実を凝縮したジュースみたいにトロッと甘くて、何杯でも飲めてしまいそうだ。

ああでも。普段飲んでいるビールよりもアルコールがきついかもしれない。

飲み過ぎないように気を付けなきゃ……。

いくらなんでも今日ばかりは武久を呼び出すわけにはいかないのだ。

酔ってはいけないと思えば思うほど余計に緊張してしまい、そわそわとバーのあちこちに視線を巡らせてしまう。

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