御曹司を探してみたら
「落ち着かないの?」
「少し……」
「彼氏とはこういう所に来ないの?」
「あはは。彼氏なんてしばらくいませんよ」
私は正直に白状してしまった。
これまで合コンや友人の紹介で出会いを求めてきたけれど、どれもいまいちパッとしなくて。
友人にもあんたは理想が高すぎるって怒られ、最近ではセッティングを断られることもしばしばだった。
そのおかげかわからないけれど、こうして田辺さんと知り合えたわけだし。
結果オーライってことかな?
私はふふふっと笑みを零すと、グラス中の液体を飲み干した。
「そう、意外だったな……」
田辺さんはカウンターに頬杖をついて、何か思案しているようだった。
かと思えば、先ほど私が空にしたばかりのグラスを持ち上げ、バーテンダーに声を掛けた。
「……彼女に同じものを」
……何だか夢のようだった。
田辺さんが私に微笑みかけているのを見て、天にも昇る気持ちになる。
(今日は素敵な夜になりそう……)
輝くばかりの夜景の中、隣には田辺さんという極上の男性がいる。
雰囲気に酔ったのか、バーという空間に慣れたのか。
私は間違いなく浮かれていて、次第に冷静な判断力を失っていったのだった。