御曹司を探してみたら

「や、あの……」

「ん?」

返事を聞き逃すまいと耳を私の口元に近づけてくる田辺さんの仕草が素敵すぎて、はにゃーんと顔の筋肉が緩んでしまう。

おかあさん。ごめんなさい。

田辺さんの魅力に抗えそうにありません。

(いいよね……?)

これが大人の恋愛ってやつなのかもしれない。

互いのことを知り合うより先に、身体の相性を知ることだって大事なはずっ!!

これが、最後のチャンスかもしれない。

一度でいいから誰もが羨むような素敵な恋がしてみたいではないか。

「早宮さん……?」

カウンターに置いていた手に手を重ねられ、返事を促される。

ずっとこの夢の中にいたかった……。

耳障りのよい夢のような甘い台詞の数々は私がずっと待ち望んでいたものあった。

“YES”と答えるのは何よりも簡単なように思われた。


“あいつはやめとけ”


……なぜか武久の声が聞こえてくるまでは。

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