御曹司を探してみたら

「んーっ!?」

口を塞がれた上に両手を背中側に捻るように拘束されると、一切身動きが取れなくなる。

(なに!?)

何が起こっているのか分からずパニックに陥る私とは、対象的な冷静な声が耳元で聞こえてくる。

「逃がすと思った?」

(田辺さん!?)

……まさか追いかけてくるなんて!!

怒るでもなく、取り乱すでもなく、カウンターで飲んでいた寸分たがわぬ静かな声色で、田辺さんは私への拘束を強めていく。

「悪いけどもう少し付き合ってもらうよ」

先ほどまでの紳士面とは打って変わった乱暴な振る舞いに恐怖を覚える。

彼が何をしようとしているのはわからないが、良からぬことを企んでいるのは明らかである。

逃げようとも身を捩ってはみるものの、ふかふかの絨毯に足をとられ上手くいかない。

(誰かっ!!)

嫌々ともがきながら助けを求めるように視線を彷徨わせると、廊下の先にまさかと言わざるを得ない人物が立っていた。

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