御曹司を探してみたら
「……勝手に触ってんじゃねーよ。このゲス野郎」
そこら辺のヤンキーと間違えそうな粗野な口の利き方だった。
でも、今はそれが何よりも私をホッとさせた。
(武久……!!)
田辺さんは武久がいるとわかると、素早く私の拘束を解き、何もしていないと主張するように白々しく両手を上げてみせた。
「触るなとは心外だな。彼女はお前の物ってわけでもないんだろう?」
「ごちゃごちゃうるせーよ。こいつに何しようとしてやがった」
「何って?お前が想像しているようなことだよ」
「……ゲスいな」
武久は再び田辺さんをこき下ろすと、腰が抜けてへたり込んでいた私に手を差し伸べた。
「早宮、立てるか?」
「たけ……ひさ……っ!!」
「だから言っただろ。“やめとけ”って」
何でここにいることがわかったのかとか、いつからいたのかとか、そんなこと今はどうでもよかった。
息も絶え絶えになって武久にしがみつく。もはや武久にお礼を言う気力もなかった。
そんな私の様子を見て、武久は一層眉間の皺を濃くした。