御曹司を探してみたら

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本当に散々な夜だった。

まるで天国と地獄を一夜で経験したようである。

(あーあ……。せっかくおめかししたのに……)

……また無駄になった。

駅のお手洗いでボロボロになったメイクを剥がしにかかると、空しさもより一層である。

帰宅するにあたってみっともなくならない程度にメイクを直すと外で待つ武久の元へと戻るのであった。

「お待たせしました……」

女子トイレの前で腕組みをして出待ちしていた武久におずおずと声を掛ける。

「もういいのか?」

「うん」

泣くだけ泣いて落ち込むだけ落ち込んだら、酔いもすっかり醒めてしまった。

ついでに御曹司サマと素敵な恋愛をするという夢からも冷めたみたい。

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