御曹司を探してみたら
「おかわりください!!」
腹立ちまぎれに拳をダンっとカウンターに叩きつけ店員さんにビールのお代わりを頼むと、呆れ顔をした武久の毒舌が炸裂する。
「お前が男を選べる立場かよく考えろよ。バーカ」
うぐっと言葉に詰まる。
武久は一流のボクサーのように、一発一発が致命傷のキレッキレのジャブを打ち込んでくる。
「大体、“イケメン”だの“御曹司”だの、いつまでも夢見過ぎなんじゃねーの?」
武久は私がバッグの中にこっそり忍ばせている少女マンガをチラリとみると、腹が減っていると言って注文したお茶漬けをずずずっと大きな音を立て無遠慮に啜り出した。
「……いいじゃん!!夢くらい見たって!!」
バッサリと容赦なく切り捨てられ、ぶーぶーと口をとがらせ不満を訴える。
うっとりとするようなあまーいセリフ、隙のないエスコート。
大空のように広―い心に、素晴らしい笑顔。
若いのにも関わらず有能で、なおかつ肩書に負けない活躍、他を圧倒するカリスマ性。
子供の時からずっと憧れていたのは少女漫画に出て来るような素敵な男性。
恋に落ちるなら、やっぱりイケメンの御曹司に限る!!
私は夢をかなえるべく、にちや理想のスーパーダーリンを探し続けているのだ。
ところが……運命の人はまだ現れてくれない。