御曹司を探してみたら
「こいつは関係ねーだろ。余計なことすんなよ」
「父親に向かってその言い方はないだろう?」
「あ!?少しは父親らしいことしてから言いやがれ」
(父親……?)
っていうことは……つまり……。
口をあんぐりと開けて、マジマジと武久と周防社長の顔を見つめる。
入社式で遠巻きに見た印象しかなかったが、こうして二人の顔を並べてみると目元や口元が瓜二つだった。
武久が周防社長と同じような年齢の重ね方をするのであろうことがよく分かる。
理屈じゃない。
ふたりは間違いなく血の繋がった親子なのである。
「周防の御曹司って田辺さんのことじゃないの……?」
「あいつがそう言ったのか?」
……違う。
確かに田辺さんは一言も“自分が周防の御曹司だ”とは口にしていない。
じゃあ、私が勝手に勘違いしてたってこと?
「武久が……御曹司サマなの……?」
恐る恐る真相を尋ねると、武久はうんざりしたようにそっぽを向いて答えた。
「俺じゃ……悪いかよ」
私は今度こそ……倒れるんじゃないかと思った。
武久が周防の御曹司サマ!?
(う、嘘でしょ!?)