御曹司を探してみたら

「それで、どうよ?周防の御曹司とやらは落とせそうなの?」

「冗談辞めてよ……。相手は武久なんだよ?」

嘘か真か、幻かと思われた周防の御曹司は実在したわけだけど、ところがどっこい武久相手に素敵なロマンスなんてありえない。

全然接点のない赤の他人同然の人ならいざ知らず、私の情けないところも、酒癖の悪さもぜーんぶ知っている武久相手に何を取り繕うっていうの?

(ありえないっつーの!!)

不貞腐れながら缶コーヒーを一気に飲み干せば、わかっちは心底おかしいとばかりに大声でケラケラと笑い出した。

「何を寝ぼけたことを言ってんのよ。ホテルから仲良く出てくる仲のくせに!!」

「なっ!!ちが……っ!!あれは!!何もなかったんだってば……!!」

ちょっと!!シレっと爆弾を放り投げてくるのやめてくれませんか!?

私は顔を真っ赤にしながら武久との関係性を否定したのだったが、わかっちは何もなかったというセリフを全く信じていないもよう。

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