御曹司を探してみたら

「あー……悪かった……。機嫌直せよ。な?」

いつになくへこんでいる私を見ると、武久は慌てて謝り始めるのであった。

あ、これはマジで困ってる。

マドンナに迫られた先ほどとは別の意味で困らせている。

武久が私のご機嫌取りなんかする必要ないのにおかしーや……。

さっきまで落ち込んでいたのに、クスリと笑みが零れる。

正直言うとちょっとホッとしているんだ。

武久ってば以前とちっとも変わらないだもん。

もし武久が正体を皆に知られたことで別人のように変わってしまっていたとしたら、私はそれこそ幻滅していたことだろう。

たとえ武久が御曹司だとしても、私達の関係性は何も変わらないって信じていてもいいのかな?

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