御曹司を探してみたら
「田辺さんから連絡なんてこないけど……」
最後に出かけたあの日以来、詫びも謝罪もなく連絡は不気味なほどにピタリとやんだ。
「もうあいつにホイホイついて行くなよ」
「なんでそんなこと言うの?」
誰に何と言われようと、あんな目に遭うなんて二度とごめんである。
頼まれたってついて行くわけないじゃない!!
「お前、気づいてないのか?俺とお前の写真を親父に送りつけたのは、田辺だ」
「はあ!?」
私は驚きのあまりご飯粒を飛ばしながら武久に詰め寄った。
「もちろん適当な人間を経由して、発信元が自分だと分からないように小細工はしているだろうがな」
武久は淡々と言うけれど、それって結構な人脈と労力が必要なんじゃない?
あの時、私は自分のことでいっぱいで、あの写真がどういう経緯で撮られたものかなんて大して気にしちゃいなかった。
……よくよく考えてみればおかしいところは複数あった。
あれほど顔がはっきりと判別できるような精度で写真を撮られていたら、いくらなんでも私と武久のどちらかが気が付くはずである。
きっと、望遠レンズかなにかを使って撮ったんだと思う。
あらかじめ私達がホテルから出てくることを知っていれば、カメラを準備するのは難しくない。
そして……あの日クラウンホテルに行くことを事前に知っていたのは田辺さんだけだ。