いつも側で君を感じるから。


その時、新くんのスマホが鳴った。

「大河かよ…こんな時に」

「えっ」

その名前に思わず反応してしまった。

「ちょっと出ていい?」

「う、うんっ…」

新くんは八雲さんからの電話をとって話し始めた。

私の心臓は嫌な音を立てていて。

あのキスのこと言ったりしないよね…?

手が微かに震えるのを自分でも感じていた。


「今?りりといるけど」

新くんの言葉にイチイチどきどきしていた。

「大河はどこにいんだよ」


え…八雲さんと合流するとかじゃないよね!?

私は思わず「ダメ!」と叫んでしまった。

新くんが驚いて私の方を見る。

「あっご、ごめん…なんでもな…」

どうしよう、絶対今顔こわばってるし、手も震えてる。

何かを感じ取った新くんが、八雲さんに「今日は無理。またな」と言って電話を切ってくれた。

私の心臓はドッドッド……と変な音を立てたままだ。

思い出したくないのに、八雲さんの名前を聞くとあの夜の事が蘇る。
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