いつも側で君を感じるから。
風は穏やかだった。
波の音が響き渡る薄暗い砂浜は、街灯が所々しかない。
近くには火力発電所があり、周りに民家は数件程度だ。
数件といってもここから結構離れたところにあるから、俺たちの声など聞こえるはずがない。
シュボッという音を立てながら、大河がジッポで煙草に火をつける。
「もーすぐ時間だな」
スマホを見るとKINGとの約束の時間が迫っていた。
全く緊張していないし恐怖感もない。
勝つことしか頭にないから。
その時、遠くから2人の男が階段を下りてくるのが見えた。
「来たか」
しゃがんでいた大河がゆっくりと立ち上がる。
「新、ひとつだけ言っとくけど」
「なんだよ」
「無理はすんなよ、絶対」
「は?」
「もし万が一のことがあれば俺はお前だけでも生かして帰す」
気持ち悪いくらい真面目な顔した大河に、俺は笑って返した。
「何言ってんだよ?万が一なんてねーだろ、俺ら2人でかかれば一瞬で…」