いつも側で君を感じるから。
「この辺でいいの?」
家の近くで八雲さんに聞かれ、私は力なく頷いた。
「いつまでも辛気くせー顔してんなよ」
「だ、だって…初めてだったんですよ!?」
「グズグズしてると後悔することもあるってこと」
「え……」
八雲さんが私の顔を真剣に見つめる。
「そんなんで新のことは救えねぇ」
「救えない……?」
「もっとしっかりしてほしいんだよね」
そう言って、「じゃあ、また」とエンジンを吹かした。
「あっ待ってください!」
私の言葉はエンジン音にかき消された。
救えないって、どういうことなんだろう。
八雲さん、私が新くんのこと好きだって気づいてたの?
だからわざとハッキリ言わせたくてあんな事……。
そうだとしても、思い出したくない。
いまだにキスの感触が唇に残っている。
ヤダ……すごいやだよ。
どうして避けられなかったんだろう。
初めてだったのに……。
初めては好きな人としたかったのに……。
「ふっ……う……」
涙がこみあげてきて視界がぼやけた。