エキストラヒロイン
重たい沈黙が流れる。
「…えっと、何してるの?」
ギクリ。
ごもっともな質問をされ、冷や汗が止まらない。
「ここ、これはですねぇ…えぇっと…」
何でもいいから言い訳を考えなきゃ。
このままじゃラブレター泥棒だと思われる。
「そこって俺の靴箱だよね?」
「………ですよねぇ」
「……………」
だめだぁ!もう弁解の余地もない状況なんだから、どうせ誤解されるくらいなら当たって砕けてしまえ!
「ごめんなさい!実は、その、来栖くんにラブレターを渡したくて!靴箱を開けたら…こう、どばばぁーって落ちちゃって、今拾ってたんです!」
「あー…」
「泥棒とかじゃないんで!あの、来栖くんが好きです!」
憧れの王子様への告白がこんなみっともないシーンになるなんて、何分か前の自分は想像できただろうか。
少女漫画のヒロインなら、もっと上手く立ち回れたんだろうか。
「………俺が好きなの?」
「うっ、うん!」
「そっか」
ドクドクと心臓が大きく脈打つたびに、体温がありえないくらい上昇してる。
顔は熱いし、体は震えるし、汗も止まらないし、せっかく頑張って書いたラブレターも生暖かく湿ったあたしの手によって、くしゃくしゃ。