エキストラヒロイン
それにしても来栖くん、良い匂いだったなぁ。
余韻に浸りながら、公ちゃんにその出来事を話した。
公ちゃんは来栖くんに本当に興味がないみたいで、実は二重人格で本性は腹黒王子だったんだよとカミングアウトしても反応は薄い。
「でね、公ちゃん。来栖くんはあたしのどこがそんなに嫌いなんだと思う?」
「耀って人の話聞かないよね」
「お?喧嘩売ってる?」
公ちゃんとあたしは美化委員の清掃活動で裏庭担当になり、適当に雑草を抜くふりをしながら二人してしゃがみ込む。
「結局、耀は来栖のどこが好きなの?」
来栖くんの好きなところ。
うーん、と。
「王子様みたいなところ」
「なんてミーハーな」
「別にいいじゃん!それしか思い浮かばないし、一目惚れってやつだし!それに好きになるのに理由なんかいらないって少女漫画でよく言ってる!」
「いい加減、その少女漫画脳どうにかしたら?来栖にも『理想だけで好きになるようなやつとは付き合えない』みたいな事言われたんでしょ?」
「そうだけどさぁー、ちょっとひどいと思わない?人の恋心踏みにじるようなこと言ってさ、理想を持つことの何がダメなのかわかんない!」
「…なんか違う気がする」
「違うって?」
小さく唸る公ちゃんに、首を傾げる。
誰にだってその人だからこそ抱く理想みたいなものはあるはずなのに、それが嫌だなんて野暮な無理を望まないでほしい。