エキストラヒロイン
ついで程度につけたあたしの深刻な悩みを堂々と言わないでぇ!
「それを直せたとしても、嫌いが普通になっただけで来栖が耀を好きになるかはわからないけどね」
「そこは主人公補正だよ。公ちゃん」
「………来栖じゃなくて、他の人を探したほうがいい気がするけどね。あたしは」
「来栖くんがいいの!」
後から登場する人物と結ばれる展開も増えてはきたけど、王道をいくならば来栖くんを諦めるわけにはいかない。
たとえ現実がどれだけ厳しくても。
あの腹黒王子の攻略する方法はきっとある!
「あ、話をすればご本人様が向こうにいるよ」
「うそうそ!ちょっと行ってくる!」
「女子に囲まれてるけど」
「そんなの気にしなーい!」
手にはめていた軍手をぽいっと地面に放り投げて、取り巻きたちに捕まっている来栖くんのもとへ走る。
身長の高い来栖くんは頭一つ以上抜けていて、変わらずジェントルマンらしい笑顔で愛想をふりまいていた。
それが偽物だと知っているのはこの中であたしだけ。
だけど、完全に出遅れたせいで全く来栖くんに近づけない…!
「く、来栖くんっ、来栖くーん!」
「今から帰るの?」
「えー先生から任された仕事があるの?」
「来栖くん本当に優しいんだね!」
黄色い声にかき消されるあたしの声。