エキストラヒロイン



あの流れは絶対に、ドSな王子様からのイケないお仕置きがある熱々の展開なのに、来栖王子は違うみたいだ。



「もういいよ。やります、やればいいんでしょ」


「そ。偉いね、山田は」



不意打ちの優しい王子様スマイル。


ズキュンッ!!



「もっかい!もっかいお願い!」


「は?」


「え、偉いねって…偉いね山田って、もっかい!」


「……………」



眉間にしわを寄せたまま背を向け、来栖くんは帰ってしまった。

見えなくなった来栖くんの姿をいつまでも見送っているのも虚しくなり、来栖くんに丸投げされた紙の山を1枚ずつこなしていく。



「なんだか奴隷みたい、あたし…」



好きの気持ちを上手く利用されて。


心を弄ばれるのは腹立たしいことだし、人間として来栖くんは最低なんじゃないかって思うけど、裏の部分の彼を否定してしまうのはヒロインじゃない。

こきを使われても、笑って受け入れられる器をどっしり構えなきゃ。


来栖くんのいう“理想だけで好きになるような女”っていうレッテルを剥がすことができるかもしれない。


良いように利用されたふりをして、あたしだってそれを利用して来栖くんとの関係を進展させてやるんだから!



と勇ましく鼻息を荒らげて、完璧に書類を完成させれたのは約2時間後のことだった。





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