エキストラヒロイン
山田は知ってしまった。
朝夜のお肌ケアは欠かさないし、流行も逃さない。
お洒落には気を遣うし、体型も気にかける。
制服は可愛く着こなしたいし、日替わりでヘアスタイルもアレンジする。
可愛くなるための努力は絶対に怠らない。
全ては『普通』から脱出するために。
「ただ苗字はどうしようもないよね…」
自習時間に、来栖くんを遠くから眺めながら呟いた。
「苗字?耀の?」
「そ、山田って普通すぎるじゃん」
「見本にはよく使われてるけどね」
「そういうのが嫌!」
いかにも一般的って感じがだめ!
少女漫画の主人公は顔が可愛いから、どんな名前でも許されるだけであって、
あたしのように街中を見渡せばいくらでもいるような普通の女子高生が名前までもパッとしないなんて、良いわけがない。
かといってお母さんの旧姓も『剛田』というゴリラ系統の苗字だから、どちらにしろ残念だった。
「耀は形から入るタイプなんだね」
「ヒロインになれる条件っていうのがあるの!その要素があたしには何もないの!」
「………どうでもいいわ」
「それに比べて公ちゃんは美人だし、全校生徒が憧れる王子様である来栖くんに1ミクロたりとも興味を示さないっていうのがヒロインっぽいから、ちょっときらい」
「そんな意味不明な理由で嫌われるの?」