幼い双子の物語【箱庭の世界番外編】
「どうして入院してるの?」
「貴女には関係無い」
「どっか悪いの?」
「人の話聞いてる?」
ああ、もうめんどくさい。
話しかけないでよ。口を開くのも億劫なんだから。
「表札に名前なかったけど、名前なんて言うの?」
「教える義理はないでしょ」
ていうか、表札がない病室に入るんじゃないわよ。
ノックもしないで。
「私はねー、安西美姫!美しい姫って書いて美姫!よろしくね」
よろしくなんてしたくないわよ。見ず知らずの人の病室に躊躇いもなく入ってくる非常識な奴となんて。
でも、ああ、そうか。
彼女の名前を聞いて合点がいった。
この病院の名前は『安西総合病院』。
つまり彼女の家系というワケだ。
いかにも元気溌剌な彼女が病院に居ることに少し違和感があった。
だってどう考えても病気があるようには見えなかったから。