ばいばい、津崎。
男子と女子はスタート位置は一緒でもすぐに別のルートになり、津崎は右へと曲がっていった。
走っているというより歩いている津崎の背中を、私はつい目で追ってしまう。
「愛だね」
隣で美貴のクスリと笑う声。
「そ、そんなんじゃないよ!」
「はは、冗談冗談」
美貴は同性だから私が津崎に対して抱いている気持ちに気づいている。それでも私は素直じゃないから、言われればすぐに否定してしまうけれど。
前半はお喋りをしながら走っていた私たちも3kmが過ぎた頃には会話がなくなり、聞こえてくるのはお互いに息づかいだけ。
「……ハア……ムリッ……泣きそう」
目の前にはまた上り坂。これで何度目だろう。これほど島の特殊な地形を恨んだことはない。
「たぶん、あと2回はあるよ……」
プリントに書かれていたルートは頭に入ってるし、10年前もこうしてフラフラになりながら走った記憶がよみがえってきた。
「……マジで?ちょっと休憩しようよ」
上り坂を走る気力はなく、ついに美貴は力尽きたように道の端へと座り込む。私も体力の限界がきていたので一緒に腰を下ろした。