ばいばい、津崎。
じりじりと照りつける太陽のせいで汗がとまらない。島育ちの人は暑さに慣れているとはいえ、こんな炎天下にマラソンだなんて未来だったら速攻教育委員会に苦情がくるレベルだ。
「時間大丈夫かな?」
美貴が息を整えながら聞いてきた。
携帯はカバンの中だから確認できないけれど、たぶんまだ余裕。そもそもみんながゴールできるように平均タイムのラインを下げているから、のろのろと歩いていない限りは間に合うはずだ。
「とりあえず呼吸が落ち着くまで休んでいこう」
私は体育座りをしながら、ふくらはぎを擦る。
絶対明日には筋肉痛になっていそう。16歳の体だし運動不足ではないけど、やっぱり坂道が多すぎて普段使わないような筋肉が悲鳴を上げている。
美貴も同様に足を触りながら「皐月は週末なにしてたの?」と、話を振ってきた。
「うーん。子猫を見に行ったり、津崎とふたり乗りをしたり――」
私は話の続きを自分で止めた。
何気なく答えてしまったけど、また津崎のことを話したら『愛だ』と、からかわれてしまうかもしれない。
だけど美貴は「ふーん」とほくそ笑むだけ。逆に恥ずかしさが増して、私は体操着の襟をパタパタと前後に揺らして気休めに風をつくった。