ばいばい、津崎。
「……実は私、彼氏と喧嘩しちゃったんだよね」
美貴が膝を抱えながらうつ向いた。
「やっぱり遠距離って難しいのかな……?」
美貴は一途で尽くしたいタイプだから最終的には相手に『重い』と言われてしまう。
私から見ればそんなのは贅沢だって思うけど。だって美貴以上に素直で性格の良い子はいないのに。
「美貴にはひとまわりぐらい歳が離れた人のほうが合ってるんじゃないかな」
「え?」
「ワガママをワガママだって思わない人で、美貴がわざわざ会いに行かなくても自分から会いにきてくれる人。そんな人のほうが美貴には合ってるよ」
頭では将来の美貴の旦那さんのことを思い浮かべていた。
美貴は少し考えたあと「そうだよね」と、なにやら元気がでたように笑みをこぼす。
「とりあえず今は走ろっか。早くゴールしないとね」
私はそう言って立ち上がった。
休憩している間に足が遅いと言われているクラスメイトにも抜かされてしまったから、きっと女子では私たちか一番最後かもしれない。
地獄のような上り坂をなんとか走りきって、残りはあと1.5km。
スタート時には別々だった男子の姿もちらほら確認できて、ここからゴールまでは同じ道を走るようにルートが交わるようになっている。
「ハア……ハア……。なんか走るの楽しくなってきた」
ツラそうにしていた美貴が何故か隣で笑顔だった。
たぶんランナーズハイってやつだと思う。私は楽しくなるどころか足がものすごく痛い。
けっこう前から右足がつるような感覚がしていて、それをかばうような走り方をしていたら今度は左足を痛めたようで、足を進めるたびにズキズキする。