ばいばい、津崎。


「まるで大人になったことがあるみたいな言い方だな」

「えっ……」

思わず動揺が顔に出る。津崎はフッと笑って「やっぱりお前ってヘンなヤツだよな」と、呆れられてしまった。


もし津崎が未来の出来事を知ったら、どうするだろう。

胸に秘めているものがあるとしたら、私の知っている結末にならないようにすべてを打ち明けてくれるだろうか。


「つ、津崎――」

喉の奥から言葉が這い出てくるような感覚。だけど……。


「健太、交代」

その声に顔をあげると、哲平がパラソルの前に立っていた。そして津崎はそのまま迎えにきた美貴と剛に捕まり「イルカに股がるから支えてて」とお願いされている。

剛と美貴はテンションが上がるとうるさいぐらい波長が合うから、ああやっていつも津崎が巻き込まれてた。

私はそんな様子にクスリと、笑みを浮かべる。


「なんか不思議だよ。全然接点なんてなかった5人で遊びにきてることが」

哲平は私の隣に座った。体は海水で濡れていて髪の毛からはお風呂あがりのように水が垂れている。


「クラスは違うのに哲平が剛のために足を止めてくれたからだよ」

A組とB組は勝手に対立関係になってるから、マラソン大会のようなことが行われると競争心のようなものが芽生える人も少なくない。


「哲平って呼ばれるの、なんか慣れない」

「え、あ、ごめん」

つい、いつもの感覚で喋ってしまった。

       
< 114 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop