ばいばい、津崎。


「ううん、俺もみんなのこと名前で呼ぶことにしたし」

完璧すぎて怖いと言っていた美貴も、マラソン大会以来『話したら気さくでいい人だ』と、言っている。


「津崎のことも健太って呼んでくれてたね」

「……まあ、うん。本人は嫌がってそうだけど」

そんなことはない、と私は首を横に振る。


みんなから一線をひかれていた津崎も、あの日からなつかれていて、美貴は健ちゃん、剛は健と呼んで、ようやく私が知っている5人の形になった。


「ちょっと、なにすんのー!?」

砂浜に美貴の声が響いて、どうやらイルカ股がって遊んでいた美貴と剛を津崎がわざとひっくり返したようだ。

仕返しだ、とふたりから大量の水しぶきを浴びている津崎は水着じゃないっていうのに洋服がびしょ濡れ。

……あれで、どうやって帰るつもりなんだか。


私はそんな光景に口を緩ませながら、羽織っていたパーカーを脱いだ。
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