ばいばい、津崎。


「さて、私も海に入ってこようかな」

イルカのことは否定してしまったけれど、実は乗ってみたかったし。立ち上がろうと腰を浮かせた瞬間、哲平に腕を掴まれた。


「本当はさ、みんなのこと名前で呼べば自然と呼んでいいことになるかなって思ったんだよね。……皐月って」

哲平の手が熱い。その瞳はまっすぐで私を射止めるような苦手な目だった。


特別なことはなにもしていないし、哲平の心がいつ私へと向き始めたのかなんて、そんなのは想像もつかない。

それでも、マラソン大会で剛を助けるために津崎が現れたように過去の出来事と重ならないこともあれば、こうして同じ未来へと繋がっていくこともある。


私には変えたい未来がある。一番は津崎ことだけど、哲平も私のことで縛りたくはない。


「じゃあ、これからはもっといい友達になれるかもしれないね」

あえて、突き放すような言い方をした。


また将来、傷つけてしまうことになるなら、私は哲平の恋がはじまる前に終わらせる。最低だと言われても、それが大切な友達へ私ができる唯一のことだから。

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