ばいばい、津崎。
美貴は例の彼氏とはあのまま喧嘩別れをしてしまった。『次は皐月が言ったとおり大人の人がいいな』なんて言っていたのに、どう見てもチャラ男なこの人たちに付いていこうとしている。
「美貴、ダメだよ」
私は強めに腕を引いた。だけどそれに反応してきたのは美貴ではなく男の子たちのほう。
「なんでダメなの?俺たちヤバいこととかしないし、むしろ超優しいよ?」
全然信用できない言葉。私は表情を変えずにさらに美貴の手を引っ張りながら歩く。だけどそのあとを男の子たちは付いてきた。
「ねえ、逃げなくてもいいじゃん」と、私の足を止めるようにしてグイッと手首を掴まれる。
「離して」
「遊んでくれるまで離さない」
そう言って掴んでる手の力を強くする。
すごく痛いし、女の子の扱いなんてよく分かっていない加減知らずの力。
「やめて……!」と、声を荒らげる寸前で、私と男の子を遮るように横から手が伸びてきた。
「なにしてんだよ」
津崎は振り払うように男の子の手を私から離してくれた。
「は?邪魔しないでくれない?」
男の子が津崎を睨むと、それ以上に強い口調で「邪魔なのはてめえらのほうだろ」と鋭い視線を浴びせる。
津崎は体格が大きいし、明らかに喧嘩慣れしてるって分かるぐらいの威圧感だから、男の子たちがそのオーラに怯むように後退りをはじめた。
「と、友達と来てるならいいや。じゃあーね」
そして逃げるように砂浜を駆けていった。