ばいばい、津崎。


このビーチは遊泳期間中だけ浜辺で花火をやることが許可されていて、他の人たちも準備をはじめていた。

美貴が用意したライターで最初に火をつけたのは手持ちすすきという花火。細長い筒状の紙管に火薬が入っていて、竹の棒のような部分を持つ。

着火するとススキの穂のように、「シュー」という音がして、火花が前方に吹き出した。

ろうそくなどがないため、着火した順番に隣の人へと火を移していく。私は剛から火をもらい、私はそのまま津崎の花火へと近づけた。

はじめは白、次に赤と色が変化していって、美貴はくるくると空中に円を描くように遊んでいる。


「洋服、乾いてよかったね」

津崎が花火を持ったまましゃがんだので、私も同じように隣で腰をおろす。


「乾いたけど、気持ち悪い」

津崎は花火を見つめながら、ぶっきらぼうに返してきた。


たしかに自然乾燥だったし、まさか本人も海に入る予定なんてなかったんだろう。乗り気じゃなかったくせにけっこう楽しんでいたと感じるのは私の気のせいじゃないと思う。

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