ばいばい、津崎。
次に選んだのは手持ちスパーク。
練り火薬を棒に巻きつけた花火で、着火すると棒を軸にして燃え進み、バチバチと音を立てる。
まるで形が花が雪の結晶のようで、火花が四方八方へと飛び散った。
「もうすぐ夏休みだね」
私が過去にきてすでに2週間が経とうとしている。心にあるのは夏休みへの高揚感ではなく、時間の進みに対する焦りと不安だけ。
「つ、津崎はなにか予定があったりする?」
「べつに、なにも」
「じゃあ、いっぱい遊ぼうよっ……!」
そう言った瞬間、タイミングよくお互いの花火が消えて、気まずい沈黙が続く。
私は慌てて「ふ、ふたりきりって意味じゃないよ?こんな風にみんなでまた遊べたらいいなって……」と、弁解しながら声がだんだんと小さくなっていった。
夏休みがくるのが、怖い。
だって、あの日が迫ってくる。
きみを失った8月21日が。
「気が向いたらな」
津崎が小さく笑ったのと同時に砂浜の中央で哲平が「火つけるよ!」と言って噴き上げ花火の導線に火を灯す。
じりじりと、赤い火が筒へと近づいていって、周りを囲んでいた美貴と剛がゆっくりとその場を離れる。