ばいばい、津崎。
その夜、私は夢を見た。
それは津崎が海に落ちたあの日のこと。
私は吹き荒れる嵐の中で防波堤に立ち、必死で名前を呼んでいた。
『津崎っ!……津崎っ……!!』
打ち寄せる波とゴーッという海鳴りの音。バシャンッと防波堤の上まで水位が迫っていて、『皐月、危ない!』と哲平が私の肩を引き寄せる。
後ろでは美貴や剛も『健ちゃーん!』『健っ!』と叫んでいて、それに続くように私も海に向かって呼び続ける。
追ってきた大人たちが止めるように『今は危ないから戻りなさい』と私たちの腕をひく。
最後まで抵抗したのは私。
『早く津崎を探してよっ!!』
強い口調で、声を荒らげた。
それでもなだめられるように『この波じゃ船は出せない』『嵐が過ぎるのを待つしかない』と冷静に言われ、私はその場にしゃがみこむ。