ばいばい、津崎。
嗚咽まじりに泣きながら、私は心の中で言い聞かせていた。
大丈夫、津崎は生きている。
だって、津崎は強いから。
弱さとは程遠い場所にいる人だから明日にでもひょっこりと現れて『なに、慌ててんだよ』って。
『俺が死ぬわけないだろ』って、そう言ってくれるはずだと、願っていた。
だけど嵐が過ぎ、穏やかな海へと戻り、帰ってきたのは津崎の携帯だけ。防波堤の下にある消波ブロックの隙間に落ちていたらしい。
ふたつ折りの携帯は広げられた状態で、完成に水没していたため電源すら入らなかった。
もしかしたら津崎は誰かにメールを打とうとしていたのかもしれないし、電話をかけようと思っていたのかもしれないし、ただ単に時間を確認しただけかもしれないし、それは本人にしか分からない。
それでも、もし、津崎がなにかを伝えようとしていたら?
その気持ちは誰にも届くことなく、今も海に沈んだまま。
どこを漂い、なにを想っているのか。
ごめんね、なにも気づけなくて。
ごめんね、助けられなくて。
ごめん、ごめん、津崎――。
ハッと、目覚めると瞳から涙が溢れていた。周りを確認して慌てて私は部屋のクローゼットを開ける。そこにある合わせ鏡の前に立ち、映っているのは16歳の私。
……よかった。
力が抜けたように胸を撫で下ろして、私は再びベッドへと戻った。時間は朝の5時30分。
夢を見たせいで、バクバクとした心臓の鼓動がおさまらない。