ばいばい、津崎。
5: 深藍―Fukaai
結局、私は二度寝することはなく、そのまま学校に行く時間まで起きていた。
津崎に会いたくて、早めに支度を終えて自転車をかっ飛ばす。だけど、この日。津崎は学校にこなかった。
担任もクラスメイトたちも『どうせズル休みだろう』と、たいして気にもとめずに、通常授業がはじまった。
私はというと、ぽっかり空席になっている津崎の席を見てはため息ばかり。授業だって全然頭に入らない。
「気になるなら電話でもしてみたらいいのに」
休み時間。私の前の席に座りながら美貴が野菜ジュース片手に言う。
「電話……?そっか、そうだよね!」
声を聞けばこの不安も少しはマシになる気がすると思い、私はスカートのポケットから携帯を出した。そして電話帳から〝津崎健太〟の名前を探して発信ボタンを押す。
プルルル……プルルルと、コール音が5回。
『なに』
スピーカーから聞こえてきたのは、たったの二文字。
「つ、津崎?や、山本だけど……」
一応、名前を名乗ってみる。津崎は『そんなの見りゃ分かる』と返されて、ちゃんと私の連絡先を登録していてくれたことに安心した。
「もしかして、寝てた?」
『うん』
……だから不機嫌というか、声もなんだかいつもよりも低くて元気がないような感じがする。