ばいばい、津崎。
「風邪でもひいた?」
これはただの勘。津崎が学校をサボることなんてよくあることだけど、なんだかただのズル休みにはどうしても思えなくて。
すると、スピーカー越しの津崎が急に黙ってしまった。
もしかして的外れなことを言われて呆れてる?それとも、話を長引かせるつもりだって怒ってる?
『べつに対したことじゃねーよ。寝てればよくなる』
……ってことはやっぱり風邪をひいたってことだよね。さっきの沈黙はなんでバレたんだろうって、戸惑っていただけだったのかもしれない。
「お、お見舞いでもいこうか?」
『は?』
なんで、という突き放すような口調。
「なんか食べたいものとか飲みたいものとかあったらなんでも言って!学校終わったらすぐに届ける――」
「私も行くっ!」
私の話を遮るようにして美貴が割り込んできた。そしていつの間にか剛まで私の会話を聞いていたようで、津崎と繋がる携帯に向かって声をかける。
「健?俺も漫画とかアニメのDVDとか持っていくよ。どんなのがいい?SF?ファンタジー?それとも萌系……」
「ちょ、ちょっと待って!」
がやがやと急に騒がしくなり、私はふたりのテンションをとりあえず落ち着かせる。しかしどうやら手遅れだったようで私の右耳から聞こえてきたのは――。
『うるせーから、誰もくるな』
プツリ、と一方的に切られてしまった電話。耳元では虚しく保留音だけが流れている。
どうやら津崎の声はふたりに聞こえていたらしく、「もう、健ちゃんたら素直じゃないな」と美貴は前のめりになっていた体を戻す。
「健が素直な時なんてないだろ。あーあ、オススメのアニメがあったのにな」と、剛。
私はそんなふたりを見ながら露骨にため息をついた。