ばいばい、津崎。


津崎は今日も学校には来なかった。やっぱりクラスメイトたちはいつものことだろうと気にかけない。

普通に朝のホームルームがはじまり、1限目のチャイムが鳴ると教室にシャーペンを走らせる音が響く。

私は机に教科書とノートを開き、形だけ授業に参加して、手元では携帯を触っていた。

先生の目を盗みながら、私はインターネットに接続していた。未来よりはるかにネット環境は悪く、タッチパネルではないためカチカチとボタン操作の音が漏れてしまう。


先生が黒板に向いた隙に私は〝パナルジン〟を検索する。


やっぱり特定の病気に使う薬ではないようだけど、私が目を止めてしまったのは副作用の文字。

そこには全身の倦怠感や食欲不振、嘔吐などと書かれていて、指先が一気に冷たくなる。


いつもだるそうに机に顔を伏せていたのは、体がツラかったから?

学校を休んでいるのも、これが原因?


すぐに津崎にメールを打とうとしたけれど、私が薬を拾ってしまったことには気づいていない。

仮にこの薬が津崎のもので、なにか人に言えないようなものを抱えているとしたら……。


これは確実に、津崎が誰にも知られたくないことだ。

そして、私がずっと知りたかったこと。

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