ばいばい、津崎。



結局、津崎に連絡することはできなかった。

そして昼休み。たまには教室以外の場所で昼食を食べようと美貴が提案して、私たちは屋上にいる。


「健ちゃんさ、あんまりサボりすぎると進級危ないよね」

美貴がメロンパンを食べながら言った。私も学食で一応パンを買ったけれど、まだ袋すら開けていない。

「みんなで突撃しちゃおうか」と冗談でもなさそうなことを付け加えると、「いや、確実にキレられるから」と剛が止める。


ふたりの会話があまり耳に入ってこない。貯水タンクの傍で影になっているとはいえ、やっぱり屋上は暑い。

手に持ったままのパンをぎゅっとすると、隣に座っている哲平が顔を覗きこんできた。


「皐月、大丈夫?」

津崎のことが気がかかりで全然大丈夫ではなかったけれど、「う、うん。平気だよ」と私は作り笑顔を浮かべる。

まだあの薬が津崎のものだと決まったわけじゃないし、津崎が秘密にしていることを私はここでみんなに言うことはできない。

哲平は私の様子がおかしいことに気づいている。周りのことを人一倍気遣う人だし、勘がとても鋭いから。

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