ばいばい、津崎。
午後の授業が終わり自転車で帰る途中、私は分かれ道の前で止まっていた。左にいけば自宅。右にいけば津崎の家。
メールひとつ送ることができない私が津崎と直接会って問いただすことができるのかって話だけど、このまま家に帰っても私は落ち着かない。
どうしようと、しばらく悩んでいると、突然「やめてください……!」と助けを求めるような声がして、慌てて自転車で向かう。
そこには40代ぐらいのショートカットの女性と、ガラの悪い男がふたり。
「いや、被害者はこっちだから。おばさんが俺たちに肩をぶつけてきたんでしょ?」
「それは貴方たちのほう……」
「は?」
ギロリと睨まれると女性はなにも言い返せずに、ただ怯えるように体を小さくしていた。
「とりあえず誠意を見せてくれないと俺たちも許せないっていうか、言っている意味分かるだろ?」と、男たちの視線が女性のカバンへ。
明らかに男たちの風貌は島の人じゃないし、おそらく観光客でもない。たまにこうして怪しい人たちが船で渡ってくることも少なくない。
この島はのどかで治安が良い反面、危機管理という部分で甘いところもあるから、空き巣などに入られてしまうことが多々ある。
そんな時は決まってこういう人たちが島をうろついていた。犯人だって確証はないけれど、私は怪しいと思っている。