ばいばい、津崎。
6: 瑠璃紺―Rurikon
*
そして次の日。教室のドアを開けると、そこには津崎がいた。窓際の一番後ろの席で微動だにせずに寝ている。
「おはよう、皐月」と、声をかけてくれたのは美貴。
「う、うん。おはよう」
私は挨拶を返しながらも、視線はずっと津崎に向いたまま。とりあえず学生カバンを自分の机の横にかけた。
「健ちゃん、学校に来たね」
「そう、みたいだね」
てっきり今日も学校に来ないと思ってた。すぐに声をかけようとしたけれど校舎に予鈴が鳴り響き、担任が教室に入ってきたので、私はタイミングを逃すように諦める。
そのあと出席番号順に点呼をとり、クラスメイトたちの返事が聞こえる中で、津崎は名前を呼ばれても返事をしなかった。
それどころかずっと顔は机に伏せたまま。担任は深いため息をつきながら、津崎の次の人の名前を呼んだ。
……もしかしたら、具合が悪いのかもしれない。
私が昨日帰り際に、『学校で会えないなら、明日もくる。明日も津崎に会いにくるから』なんて押し付けるようなことを言ったから、ムリをして登校してきたんじゃないかって、考えた。
だけどホームルームが終わり、休み時間になっても津崎と話すことはできなかった。
正確には、無視された。
呼び掛けても反応してもらえずに、「うるさい」と小言を言われることもない。
私が透明人間になったのか、それとも津崎が透明人間になったのか、どっちにしても同じ空間にいるのに意志疎通ができない。
話しかけるな、と睨まれたほうが、よっぽどマシだと思った。