ばいばい、津崎。
保健室はとても静かだった。
津崎を椅子に座らせた私はガーゼを手に取って消毒薬で濡らす。それを切れている口元へと当てると「痛っ……」と津崎の声が漏れる。
さっきは気づかなかったけれど、哲平の言うとおり津崎も傷だらけだ。白いワイシャツには血が付いているし、おそらく口の中も鉄の味がしていると思う。
「とりあえずワイシャツ脱いで」
私は催促するように手を伸ばす。
「なんで?」
「血の染み抜きしないと取れなくなっちゃうよ。お母さんに心配されたくないでしょ?」
まだ時間はあまり経ってないから、水で洗い流せると思う。津崎はしぶしぶワイシャツを脱いだ。
筋肉質でしっかりとしている上半身。だけど今はドキドキしてない。むしろ私は怒っている。
保健室の流し台で血がついた箇所を水で濡らしながら、私は津崎へと問いかけた。
「今日、学校に来たのは私に家に来てほしくなかったから?」
ジャーという蛇口から出る水の音が響く。
「ちげーよ。たまたま気が向いただけだ」
それにしては露骨すぎるというか、今日1日の津崎の態度にはけっこう傷ついた。私はキュッと蛇口を止めて、ハンカチで濡らした場所を抑えながら再び津崎のもとへ。
「津崎って、けっこう分かりやすく拒絶するよね」