ばいばい、津崎。
剛の家も瓦屋根の平屋建てだった。縁側には日除けのすだれが垂れ下げてあり、風鈴の音が心地よく鳴っている。
剛の自宅までの道のりを聞く過程で、美貴が電話をした時に『着いたら勝手に上がっていいよ。俺の部屋、廊下の突き当たりだから』と言っていたらしいので、私たちはインターホンを押さずにお邪魔した。
部屋のドアを開けると、そこには哲平しかいなかった。
「あれ、剛は?」
美貴がビニール袋をテーブルに置きながら言う。
「健太のこと迎えにいったよ」
課題をみんなでやろうと提案したのは美貴だけど、それなら津崎も誘おうと言ったのは剛。
無理やりでも引っ張ってくると意気込んでいたけれど、剛じゃ完全に力負けしそうな予感しかしない。
大丈夫かな……と、心配しつつ私もビニール袋と背負っていたリュックを下ろした。
「ごめん。買いもの任せちゃって。重くなかった?」
私が思わず「よいしょっと」なんて、声を出してしまったから哲平に気を遣わせてしまったようだ。
「平気だよ。ペットボトルも550mlしか売ってなかったし、重くなるものは買ってきてないからさ」
「お金払うよ。いくら?」
「えっと、レシートは美貴が……」
ふと、美貴のほうを見ると、なぜかニヤニヤしながら私たちのことを見ていた。そしてそのまま剛の許可なしにベッドを椅子代わりにして、キュロットスカートから伸びる長い足を交差させる。
「哲平って、皐月に優しいよね」
なんだかものすごく他意があるような言い方。