ばいばい、津崎。


冷蔵庫の前に立ち、思わず未来の感覚で自動製氷機を探してしまったけれど、この時代にはそういう機能はたしか付いていなかった。

冷凍庫を開けると、そこには製氷皿があり15個のくぼみにできた氷のトレーがふたつ。私はそっと引き抜いて下向きに力を加えると、パキッと氷が剥がれる音。


その氷を各コップへ3つずつ入れていると、「皐月」と名前を呼ばれた。振り向くと、そこには哲平が立っていた。


「ひとりじゃ5人ぶんのコップは運べないだろ?」

どうやら手伝いにきてくれたようだ。


「ありがとう。製氷皿の氷なくなっちゃったんだけど、水入れて戻したほうがいいよね?」

「じゃあ、俺がやるよ」

哲平はそう言って台所の蛇口をひねる。製氷皿のくぼみに水を入れて冷凍庫に入れ戻したところで、哲平がふいに言葉をもらした。


「皐月ってさ……」

「ん?」


「津崎のこと、好きだよな」


ドキッと、心臓が跳ねあがる。私はエサを求める鯉のように口をぱくぱくさせるだけで、なにも言い返せない。それを見た哲平が切なそうに眉毛を下げた。


「皐月は分かりやすいから」

ただでさえ暑いのに、顔の周りの温度が上昇していく。


……わかりやすい、だろうか。そういえば前にも美貴に同じようなことを聞かれた気がする。

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