ばいばい、津崎。
それがどこから、なんて分からないけれど、そのあと隣同士で課題を進め、美貴や剛がまた騒ぎはじめても津崎と一度も目が合わなかった。
そして空が黄昏色に染まる頃、私たちは解散することになり、その帰り道。スタスタと前方を歩く大きな背中を私は追いかける。
「……津崎っ!」
その足はピタリと止まり、ゆっくりと私のほうを振り向いた。
「なに?」
小走りをしたせいか自分の息がわずかに上がっていたけれど、呼吸を整える暇もなく津崎は私を不機嫌そうな眼差しで見下ろしていた。
「え、えっと……」
ひき止めたくせに、言葉が出てこない。
だってせっかく会えたのにあまり話ができなかったし、このまま別れてしまったらモヤモヤする感情が残ってしまう気がしたから。
「わ、私と哲平の話、聞いてた?」
津崎のことも話していたし、告白とか付き合いたいとか断片的に聞かれていたなら恥ずかしすぎる。
「あー聞いたけど、べつに」
私の気持ちとは裏腹に、津崎の素っ気ない返事。
「坂井いいヤツじゃん。付き合えばいいのに」
「え?」
思わず気の抜けた声を出してしまった。哲平と付き合えばいいって……。もしかしたら津崎はその部分のやり取りしか聞いていなかったのかもしれない。
ちょっとホッとしつつも、津崎の言葉にチクリと胸が痛む。