ばいばい、津崎。


ショックというより、頭を硬いもので叩かれたような衝撃だった。

どうして追えば追うほど、津崎は離れていってしまうんだろう。どうしてこんなに難しいのだろう。

失いたくないものは、たったひとつだけなのに。


そして次の日。玄関から絶え間なく響いてくるインターホンで目が覚めた。

ピンポーン、ピンポーンとうるさくて、お母さんが応対してくれるだろうとまぶたを閉じたけれど、今日は平日だから仕事のはず。

ただでさえ津崎のことで落ち込んでいて、浅い眠りしかできなかったっていうのに。


私はため息をつきながら仕方なく玄関のほうへと向かう。覗き穴から一応確認して、そこに立っていたのは……。


「皐月、おはよう」

それは美貴と剛だった。


「え、どうしたの?」

「暇だから遊びにきたんだよ」と、剛は昨日の残りのお菓子を持ってきていて、美貴は「お邪魔しまーす」と許可していないのに勝手に上がりこんでしまった。

とりあえず私の部屋に案内したけれど、まだ部屋着のままだし、片付けてないから散らかっている。

床に落ちていた雑誌を拾いあげながら、私はもう一度ため息をはく。


「いきなりなんなの?っていうか、なんでうちが分かったの?」

新聞の勧誘かなにかだと思っていたから、ふたりが立っていてビックリした。


「だって島に山本っていう名字は一軒しかないし、俺の情報網を辿れば楽勝だよ」と、剛が鼻を高くしているけれど、あんまり自慢にはなっていない気がする。


「やっぱり皐月の部屋もエアコンないんだね」

美貴はすでに寛ぎはじめていて、テーブルに持ってきたお菓子や飲み物を並べていた。
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