ばいばい、津崎。


すると剛は「え、えっと……」と、ぼそぼそと口ごもった。それでも言葉の続きが気になる私たちはじっと剛の顔を凝視する。


「いや、あの、勝手に言ったら健に怒られそうだから」

剛は飲み物をゴクリと飲んだ。


「えー気になる!教えて教えて!」

美貴はまるでだだっ子のように『教えて』を連呼していて、剛が諦めたように唇を動かす。


「実は、皐月が熱中症で倒れたって嘘ついたんだよ」

「……え?」

ふいに私の名前が出てきて動揺が隠せない。


「いや、そんなに大袈裟に言ったわけじゃないよ?ただ課題をみんなでやる約束をして、皐月がうちに来る途中で具合が悪くなったからそのまま運んで寝てる的なことを……」

剛の声が次第に小さくなっていく。


「なにそれ……」

ぽつりと呟くと、私が怒ったと勘違いした剛が慌てて訂正する。


「縁起でもないことを言ったことはマジで反省してる!でもなにか理由をつけないと健は絶対来てくれないって思ったからさ」

「だから私が倒れてるって、嘘ついたの?」

「……はい。いや、でもまさか健が信じて、走ってうちまで行くなんて俺も思ってなかったっていうか」


なんなの、本当に。

私が怒ってるのは剛に対してじゃない。

私を拒絶するくせに、そんな優しさを見せる津崎に対してだよ。そうやって突き放したと思えば、すぐ引き寄せて、津崎がなにを考えてるか分からない。

……分からないよ、バカ。
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